「流れの早い この世の岸辺に」
心のうちに抱えた 苦さや悲しみを
打ち明けたくなるような 優しさは
同じものを抱えたゆえなのか
その抱えたものを透した優しさの中に
どれだけの強さが流れていることか
ねむの花は私にとっては特別な花です。
どれだけ昔のことかわからない懐かしさが
誰のことかわからない懐かしさが
湧きあがります。
ねむの花 詩 壷田花子
あなたは つかれた
おねむりなさい と言うように
ねむの花の咲く夕べ
夢のような夕べ
あれは やさしいあわい花
房のような花
風の中で誰か歌う
鳥のように
光のように
とぎれとぎれの思い出しても
声にはたたぬ あれは昔の愛の歌よ
変りはてた この世の岸辺
にがく たたずむ私の胸に
ふたたび あわい夢を盛りあげ
房のような花
夢をすすめるねむの花
やさしい腕によりそって
愛に溶けいる 眠りは忘れ
くるしい眠りのみが私を誘う
流れの早い
この世の岸辺に